累進課税とは、所得が増えるに従って適用される税率も高くなる課税方式のことを指します。累進課税制度では、所得が高い人ほど高い税率で課税されるため、所得の再分配を促進し、所得格差を縮小する効果があります。
累進課税の仕組み
累進課税は、所得金額に応じて異なる税率を適用する方式です。税率は通常、所得の範囲(所得階層)ごとに設定されており、これを「税率階層」や「税率スラブ」と呼びます。
以下に、累進課税の一般的な仕組みを示します。
累進課税の例(日本の所得税)
2023年現在の日本の所得税の税率は以下のようになっています:
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000,000円以下 | 5% | 0円 |
1,000,001円〜1,949,000円 | 10% | 50,000円 |
1,950,001円〜3,299,000円 | 20% | 254,000円 |
3,300,001円〜6,949,000円 | 30% | 636,000円 |
6,950,001円〜8,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
9,000,001円〜17,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
18,000,001円以上 | 45% | 4,796,000円 |
累進課税の計算例
例1: 課税所得が4,000,000円の場合
- 各階層に対応する税額を計算:
- 1,000,000円 × 5% = 50,000円
- 949,000円 × 10% = 94,900円
- 1,349,000円 × 20% = 269,800円
- 701,000円 × 30% = 210,300円
- 合計税額: 50,000円 + 94,900円 + 269,800円 + 210,300円 = 625,000円
- 控除額を適用: 625,000円 – 636,000円 = -11,000円
実際の所得税額: 最終的な税額は負の値にならないため、控除額分を超えた場合、適用される税率の範囲内で調整されます。
例2: 課税所得が6,000,000円の場合
- 各階層に対応する税額を計算:
- 1,000,000円 × 5% = 50,000円
- 949,000円 × 10% = 94,900円
- 1,349,000円 × 20% = 269,800円
- 3,700,000円 × 30% = 1,110,000円
- 合計税額: 50,000円 + 94,900円 + 269,800円 + 1,110,000円 = 1,524,700円
- 控除額を適用: 1,524,700円 – 636,000円 = 888,700円
実際の所得税額: 888,700円
累進課税の目的と効果
- 所得再分配: 累進課税は、高所得者から多くの税金を徴収し、低所得者には比較的低い税率を適用することで、所得格差を縮小する役割を果たします。
- 社会的公平性: 所得に応じた税負担を求めることで、社会的な公平性を実現します。高所得者ほど多くの社会的恩恵を受けると考えられるため、その分多くの税金を負担するのが公平だとされています。
- 財政収入の確保: 累進課税により、政府は安定した財政収入を確保し、社会保障や公共サービスの財源とすることができます。
まとめ
累進課税は、所得が高い人ほど高い税率で課税する方式であり、所得再分配の役割を持ち、社会的公平性を実現するための重要な税制度です。日本の所得税も累進課税を採用しており、所得に応じて異なる税率が適用されます。適切な税率と控除額を設定することで、社会全体のバランスを取りながら、公平な税負担を実現しています。
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